米国債へのスタンス
ドル円相場は前週末の米雇用統計を受けて年末の利上げ観測が急速に広まり、98円台後半まで上昇した流れが継続すると思いきや本邦輸出企業や機関投資家のドル売りが持ち込まれ、97円台に戻す展開を見せた。週末には堅調な株価を背景に再び98円台半ばまで値を持ち直しているものの、新興国中心に米国債へのスタンスに変化が生じているとの懸念が為替マーケットを動かす主な要因となった。
相場を動かす今後の材料
一般的には今週も株価や原油を始めとした商品価格の上昇が継続していることで“ドル売り・円売り”に傾き、相対的に欧州通貨やオセアニア通貨などが強含む展開を予想する声が強い。しかしながら、先週米国10年債利回りが4%台まで急騰したのは景気底打ちと回復期待という面があったことも事実だが、中国やロシア、ブラジルなどの新興国が外貨準備で米国債からIMF債など他の国際準備通貨へ組み替える意思を表明したことが背景にあった。
米国政府による巨額の財政出動に絡み、先週は3年債、10年債、30年債と続けて入札を行ってまずまずの結果となったものの、信用不安を払拭するにはまだまだ時間を要するため、今後の為替市場においては重要な変動要因として意識されることになる。勿論、中国などの新興国はすでに大量の米国債を保有していることから、これらの新興国は米国債下落に繋がる保有株の売却を直ちに行うことはないと思われるが、16日から始まるBRICs首脳会議にてどのような表現で共同声明を出してくるか、マーケットの注目度は高い。
リスク志向の高まり
さて為替相場の短期的な動きを探るためIMM筋のポジション動向を見てみると、9日現在の円のネットポジションが5月8日以来売り持ちに転じていることが分かった。リセッション最悪期を脱したとの見方から株価は上昇し、ボーナスシーズンを前にリスク選考の動きが始まったという期待が短期投機筋のポジションに反映されていると云える。仮に米国債の価値を維持するためにガイトナー米財務長官など当局関係者から「強いドル」政策への言及があれば、円売りの動きも加速してくる可能性がある。
財政の健全化という非常に難しい舵取りは暫く続き、大きなリスクを抱えつつも停滞していた投機マネーが動きだしたことは明るい材料として為替相場を支えていくことに繋がっていく。景気への楽観的な見通しが長期金利上昇を相殺すれば、リスク資産への投資は夏場に向けて増加していくことが予想される。その一方で、中長期というスタンスで為替相場を探るには不安定要素が多いため、時間をかけて消化していく必要があるだろう。
為替相場の見通し
今週は月曜が米国の休場(キング牧師の誕生日)で低調な滑り出しとなった。しかしながら、先週末の金曜(14日)に発表された中国の準備預金率の引き上げが影響しており、ドル円・クロス円はやや円高傾向でスタートしている。
注目されていたEU財務相会合では、欧州金融安定化基金(EFSF)の規模拡大・機能拡充について進展が見られず、支援策に関する決定の延期が示唆されたことが金利上昇幅を限定させたが、ドイツの1月ZEW景況感調査が市場予想を上回るなど、支援策を直ぐに決定しなければいけない程の状況にはないと受け止められた模様である。日本や中国、ロシアはEFSFが発行する債券を購入する可能性を発言したことも欧州の財務懸念を緩和させユーロ買い圧力を高めている。ただ、欧州の財政危機の問題が解決されたわけではないので、いつ再燃するか分からない状況にあることを注意しておく必要があるだろう。さらに重要だったのが中国の経済指標の発表である。同国の追加利上げに影響を与える2010年12月の消費者物価(CPI)が前年比で4.6%上昇し、市場予想通りの結果となった。前回の5.1%よりも低下したが、中国政府が2010年のCPI前年比の上昇率を3%以内に抑える目標を掲げているだけにインフレ懸念は高まり、今後の利上げ期待を過熱させている。
来月3日は中国の旧正月(春節)に当たり、大晦日に当たる2日から1週間程度お休みとなることから、その前に追加利上げの可能性があるのではとの憶測が流れている。中国当局による利上げ観測が強まれば、豪ドルなど資源国通貨が売られ、円の上昇余地が広がることになる。
また前週(1月15日までの1週間)の米・新規失業保険申請件数の前週比で7,000人減の40万4,000人となり、4週平均でも小幅減となった。米雇用が僅かに回復しているとも考えられるが、現段階での雇用回復が本物かどうかの確認は難しい。また、来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるが、バーナンキFRB議長の発言や米長期金利の動向にも注意が必要である。イベント前には様子見ムードが強まり調整を含めた低調な取引となることが多いが、結果を確認するまではドル円相場での上値が重い展開が続く見方に変化はない。